この記事では、日商簿記3級試験で出題される費用の仕訳について解説しています。問題文からどの勘定科目で仕訳すればよいかを判断できるようにしましょう。
- 日商簿記3級では「消耗品費」「通信費」「租税公課」「旅費交通費」「水道光熱費」「広告宣伝費」などの費用勘定が出題される可能性がある
- 費用処理した消耗品や切手、収入印紙などが、決算日において未使用で残っていた場合は「貯蔵品」(資産)に振り替える
問題文に出てくるキーワードと勘定科目を
紐づけて覚えてしまうのも手だよ
1. 用語と勘定科目
- 収入印紙(しゅうにゅういんし) … 税金や手数料などを徴収するために国が発行している証票。
- 固定資産税(こていしさんぜい) … 所有している土地や建物などの固定資産に課される税金。
- 自動車税(じどうしゃぜい) … 所有している自動車に課される税金。
- 消耗品費(しょうもうひんひ) … 文房具やコピー用紙などの消耗品を処理するための勘定科目。費用。なお、定義として、使用期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものが該当する。
- 通信費(つうしんひ) … 電話や郵便、インターネットなどの通信手段の使用料を処理するための勘定科目。費用。
- 租税公課(そぜいこうか) … 印紙税や固定資産税などの税金や公共団体の会費や罰金などの公課を処理する勘定科目。費用。
- 旅費交通費(りょひこうつうひ) … 電車やバス、車などによる移動費や、出張手当や宿泊費などの出張に伴う支出を処理する勘定科目。費用。
- 水道光熱費(すいどうこうねつひ) … 電気、ガス、水道などの料金を処理する勘定科目。費用
- 広告宣伝費(こうこくせんでんひ) … 商品・サービスの販促や会社のイメージアップのための広告や宣伝への支出を処理する勘定科目。費用。
- 貯蔵品(ちょぞうひん) … 未使用の消耗品や切手、収入印紙などを処理する勘定科目。資産。
2. その他の費用の仕訳
2-1.【消耗品費】消耗品を購入したときの仕訳
文房具(消耗品)200円を購入し、代金は現金で支払った。
文房具やコピー用紙など、すぐに消費してなくなるものは「消耗品費(しょうもうひんひ)」という勘定科目で費用として処理します(←借方記入)。
なお、実際には消耗品かどうか判断が難しい場合があるので、「使用期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のもの」という定義にあてはまるかどうかで判断することになります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 200 | 現金 | 200 |
2-2.【通信費】切手やはがきを購入したときの仕訳
郵便局で郵便切手300円分、はがき150円分を購入し、代金は現金で支払った。
切手やはがきを購入したときは、「通信費(つうしんひ)」という勘定科目で費用として処理します(←借方記入)。
使ってなくなるという意味では消耗品費と間違えてしまいそうですが、郵便という通信手段にかかった費用というところに着目して、消耗品費ではなく通信費として処理します。
なお、郵便にかかる費用だけでなく、電話やインターネット通信にかかる費用なども通信費として処理します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
通信費 | 450 | 現金 | 450 |
2-3.【租税公課】収入印紙を購入したときの仕訳
郵便局で収入印紙400円分を購入し、代金は現金で支払った。
収入印紙を購入したときは、「租税公課(そぜいこうか)」という勘定科目で費用として処理します(←借方記入)。
なお、収入印紙とは、税金や手数料などを徴収するために国が発行している証票のことをいいます。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
租税公課 | 400 | 現金 | 400 |
2-4.【租税公課】固定資産税や自動車資産税を納付したときの仕訳
土地の固定資産税150円、営業用車両の自動車税100円を現金で支払った。
土地や建物などの固定資産を所有している場合には、固定資産税という税金がかかります。また、自動車を所有している場合は自動車税がかかります。
固定資産税や自動車税を納付したときは、「租税公課」勘定で費用として処理します(←借方記入)。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
租税公課 | 250 | 現金 | 250 |
2-5.【旅費交通費】交通系ICカードに入金(チャージ)したときの仕訳(費用で処理する場合)
公共交通機関の料金支払用ICカードに現金500円を入金した。なお、当社では入金時に全額を費用に計上している。
電車やバスなどの公共交通機関の料金支払用ICカード(Suicaなどの交通系ICカード)に入金したときは、「旅費交通費(りょひこうつうひ)」という勘定科目で費用として処理します(←借方記入)。
なお、問題文で「入金時に仮払金として処理する」とある場合は、仮払金(資産)で処理します。問題文の指示に注意しましょう。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
旅費交通費 | 500 | 現金 | 500 |
2-6.【水道光熱費】電気代やガス代、水道代を支払ったときの仕訳
店舗の電気代100円、ガス代50円、水道代50円を現金で支払った。
電気代やガス代、水道代などの水道光熱費を支払ったときは、「水道光熱費」勘定で費用として処理します(←借方記入)。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
水道光熱費 | 200 | 現金 | 200 |
2-7.【広告宣伝費】広告を出したときの仕訳
当社商品の広告掲載料600円を現金で支払った。
商品・サービスの販促や会社のイメージアップのための広告や宣伝を行ったときは、「広告宣伝費(こうこくせんでんひ」勘定で費用として処理します(←借方記入)。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
広告宣伝費 | 600 | 現金 | 600 |
3. 【貯蔵品】決算日に切手や収入印紙などが残っているときの仕訳(★決算整理仕訳)
期末日において、郵便切手100円と収入印紙200円が未使用であることが判明した。いずれも当期において購入し費用として処理していたが、これらを貯蔵品勘定に振り替えた。
決算日において、切手やはがき、収入印紙などが使用されずに残っていたときは、「通信費」や「租税公課」などの費用勘定から「貯蔵品(ちょぞうひん)」という資産の勘定科目に振り替えます。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貯蔵品 | 200 | 通信費 | 100 |
租税公課 | 200 |
4. 確認テスト
4-1.【問題1】その他の費用の仕訳
下記の取引について仕訳してください。ただし、勘定科目は選択肢から最も適当と思われるものを選び、記号で解答すること。
郵便局で郵便切手¥1,000、はがき¥2,500、収入印紙¥3,000を購入し、代金は現金で支払った。
【選択肢】
ア. 貯蔵品 イ. 通信費 ウ. 消耗品費 エ. 租税公課 オ. 現金 カ. 広告宣伝費
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
記号 | 金額 | 記号 | 金額 |
( ) | ( ) | ||
( ) | ( ) |
解答・解説を見る
【解答】
借方 | 貸方 | ||||
---|---|---|---|---|---|
記号 | 金額 | 記号 | 金額 | ||
イ | 通信費 | 3,500 | オ | 現金 | 6,500 |
エ | 租税公課 | 3,000 |
【解説】
その他の費用に関する仕訳問題。
- 郵便切手、はがきを購入したときは、「通信費」(費用)を←借方に記入します。
- 収入印紙を購入したときは、「租税公課」(費用)を←借方に記入します。
- 現金で支払ったときは、「現金」(資産)を貸方→に記入します。
4-2.【問題2】貯蔵品の仕訳
下記の取引について仕訳してください。ただし、勘定科目は選択肢から最も適当と思われるものを選び、記号で解答すること。
郵便切手¥1,000、はがき¥2,500、収入印紙¥3,000を購入し、いずれも費用として処理していたが、決算日において郵便切手¥500、はがき¥200、収入印紙¥700が未使用であることが判明したため、これらを貯蔵品勘定に振り替えた。
【選択肢】
ア. 消耗品費 イ. 租税公課 ウ. 貯蔵品 エ. 広告宣伝費 オ. 通信費 カ. 現金
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
記号 | 金額 | 記号 | 金額 |
( ) | ( ) | ||
( ) | ( ) |
解答・解説を見る
【解答】
借方 | 貸方 | ||||
---|---|---|---|---|---|
記号 | 金額 | 記号 | 金額 | ||
ウ | 貯蔵品 | 1,400 | オ | 通信費 | 700 |
イ | 租税公課 | 700 |
【解説】
貯蔵品の処理に関する仕訳問題。
- 未使用の郵便切手、はがき、収入印紙は「貯蔵品」(資産)で処理します(←借方記入)。
- 郵便切手、はがきは購入時に「通信費」(費用)で処理するため、これを貸方→に記入して振り替えます。
- 収入印紙は購入時に「租税公課」(費用)で処理するため、これを貸方→に記入して振り替えます。
以上で第25回の日商簿記3級講座はおわりです。お疲れさまでした!