第23回 建物・土地の賃貸借と差入保証金【日商簿記3級講座】

この記事では、建物や土地の賃貸借に関する仕訳について解説しています。建物や土地を借りたり、誰かに貸したり、敷金を差し入れたりしたときの仕訳について学びます。

この記事で学ぶこと
  • 敷金や保証金を差し入れたときは、借方に「差入保証金」(資産)を記入する
  • 敷金や保証金が返金されたときに差し引かれた修繕費は、「修繕費」(費用)で処理する
  • 家賃を支払ったときは「支払家賃」(費用)、地代を支払ったときは「支払地代」(費用)で処理する
  • 家賃を受け取ったときは「受取家賃」(収益)、地代を受け取ったときは「受取地代」(収益)で処理する
ダニー

固定資産は買うだけじゃなく、借りることもあるよね
借りた場合と貸した場合の両方の仕訳を学ぶよ!

目次

1. 用語と勘定科目

用語
  • 敷金(しききん) … 建物などの物件を借りたときに、貸主に対して預けておく保証金。原則として解約時(退去時)に返金される。
  • 家賃(やちん) … 建物の賃借料。
  • 地代(ちだい) … 土地の賃借料。
勘定科目
  • 差入保証金(さしいれほしょうきん) … 敷金や保証金を差し入れた場合の退去時に返金を受ける権利を表す勘定科目。資産。
  • 支払家賃(しはらいやちん) … 支払った家賃を処理する勘定科目。費用。
  • 支払地代(しはらいちだい) … 支払った地代を処理する勘定科目。費用。
  • 受取家賃(うけとりやちん) … 受け取った家賃を処理する勘定科目。収益。
  • 受取地代(うけとりちだい) … 受け取った地代を処理する勘定科目。収益。

2. 建物や土地を借りたときの仕訳

2-1. 敷金や保証金を差し入れたときの仕訳

取引

ダニー株式会社は、店舗用の建物を1か月の家賃100円で賃借する契約を結び、敷金(家賃2か月分)および不動産会社への仲介手数料(家賃1か月分)を普通預金口座から支払った。

敷金や保証金を差し入れたときの仕訳

建物などを借りる際に、敷金や保証金を差し入れる(支払う)ことがあります。敷金や保証金は、退去時に原則として返ってくるお金です。

敷金や保証金を差し入れたときは、「退去時に返金を受ける権利」が発生したと考え、この権利を「差入保証金(さしいれほしょうきん)」という勘定科目を使って資産の増加(←借方)として記録します。金額は家賃2か月分なので、月額家賃100円×2か月の200円で記入します。

一方、不動産会社への仲介手数料は返ってこないお金なので、「支払手数料」で費用処理します(←借方記入)。

敷金や保証金を差し入れたときの仕訳
借方貸方
差入保証金 200普通預金 300
支払手数料 100

2-2. 家賃や地代を支払ったときの仕訳

取引

ダニー株式会社は、店舗の家賃100円(1か月分)、駐車場として借りている土地の地代50円(1か月分)を普通預金口座から支払った。

家賃や地代を支払ったときの仕訳

家賃(建物の賃借料)を支払ったときは、費用の発生として「支払家賃(しはらいやちん)」で処理します(←借方記入)。

また、地代(土地の賃借料)を支払ったときは、費用の発生として「支払地代(しはらいちだい)」で処理します(←借方記入)。

家賃と地代で勘定科目が異なるので注意しましょう。

家賃を支払ったときの仕訳
借方貸方
支払家賃 100普通預金 150
支払地代 50

2-3. 退去時に敷金や保証金の返金を受けたときの仕訳

取引

ダニー株式会社は、建物の賃貸借契約を解約し、契約時に支払った敷金200円について、修繕費を差し引かれた残額150円が普通預金口座に振り込まれた。

退去時に敷金や保証金の返金を受けたときの仕訳

敷金や保証金が返金されたときは、返金を受ける権利がなくなったと考え、資産の減少として「差入保証金」を貸方→に記入します。このとき、金額は契約時に支払った全額(200円)で記入します。

一方、実際に返ってくる金額は、ハウスクリーニング代などの修繕費が差し引かれた金額にある場合があります。

修繕費が差し引かれたときは、「修繕費」勘定で費用処理します(←借方記入)。金額は50円(敷金の金額200円-入金額150円)で記入します。

退去時に敷金や保証金の返金を受けたときの仕訳
借方貸方
普通預金 150差入保証金 200
修繕費50

3. 建物や土地を貸して、家賃や地代を受け取ったときの仕訳

取引

ダニー株式会社は、ミシェル商事から店舗の家賃100円(1か月分)、土地の地代50円(1か月分)を現金で受け取った。

建物や土地を貸して、家賃や地代を受け取ったときの仕訳

建物や土地を貸し出した場合は、借主から家賃や地代を受け取ることになります。

家賃を受け取ったときは、収益の発生として「受取家賃(うけとりやちん)」で処理します(貸方→記入)。

また、地代を受け取ったときは、収益の発生として「受取地代(うけとりちだい)」で処理します(貸方→記入)。

家賃や地代を受け取ったときの仕訳
借方貸方
現金 150受取家賃 100
受取地代 50

4. 確認テスト

4-1.【問題1】建物や土地を借りたときの仕訳

下記の取引について仕訳してください。ただし、勘定科目は選択肢から最も適当と思われるものを選び、記号で解答すること。

店舗用の建物を1か月の家賃¥1,500で賃借する契約を結び、1か月分の家賃、敷金(家賃2か月分)および不動産会社への仲介手数料(家賃1か月分)を当座預金口座から支払った。

【選択肢】
ア.支払手数料   イ. 建物  ウ. 当座預金
エ. 支払地代  オ. 支払家賃  カ. 差入保証金

解答欄のイメージ
借方貸方
記号金額記号金額
(   )(   )
(   )(   )
(   )(   )
解答・解説を見る

【解答】

借方貸方
記号金額記号金額
差入保証金 3,000当座預金 6,000
支払家賃 1,500
支払手数料 1,500

【解説】

建物の賃借時に関する仕訳問題。

  • 建物の賃借時に敷金や保証金を差し入れたときは、「差入保証金」(資産)を←借方に記入します。
  • 家賃を支払ったときは、「支払家賃」(費用)を←借方に記入します。
  • 仲介手数料を支払ったときは、「支払手数料」(費用)を←借方に記入します。
  • 当座預金口座から支払ったときは、「当座預金」(資産)を貸方→に記入します。

4-2.【問題2】退去時に敷金や保証金の返金を受けたときの仕訳

下記の取引について仕訳してください。ただし、勘定科目は選択肢から最も適当と思われるものを選び、記号で解答すること。

建物の賃貸借契約を解約し、契約時に支払った敷金¥3,000について、修繕費¥800を差し引かれた残額が当座預金口座に振り込まれた。

【選択肢】
ア.建物   イ. 修繕費  ウ. 当座預金  エ. 支払家賃  オ. 差入保証金  カ. 支払手数料

解答欄のイメージ
借方貸方
記号金額記号金額
(   )(   )
(   )(   )
解答・解説を見る

【解答】

借方貸方
記号金額記号金額
当座預金 2,200差入保証金 3,000
修繕費 800

【解説】

建物の退去時に関する仕訳問題。

  • 差し入れた敷金や保証金が返金されたときは、資産の減少として「差入保証金」(資産)を貸方→に記入します。このとき、金額は差し入れた敷金の全額(3,000円)を記入します。
  • 敷金から修繕費を差し引かれたときは、費用の発生として「修繕費」(費用)を←借方に記入します。
  • 当座預金口座に入金があったときは、「当座預金」(資産)を←借方に記入します。金額は敷金の金額3,000円から修繕費800円を差し引いて計算します。

以上で第23回の日商簿記3級講座はおわりです。お疲れさまでした!

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