この記事では、これから簿記を学ぶ方のために簿記とは何かを解説しています。
日商簿記などの資格取得にあたって、簿記の理解を深めるとともに、学習へのモチベーションアップになると幸いです。
簿記は社会にとってすごく重要なものなんだ!
これから簿記を勉強する人には、ぜひ知ってほしいな!
簿記ってなんだろう?
学生の方でも社会人の方でも、簿記(ぼき)という言葉自体は聞いたことはあるのではないでしょうか。おそらく「簿記検定」とか「日商簿記」とか、資格として有名なのでそこから知ったという方が多いかと思います。
でも、簿記について説明して、と言われてもスパっと答えられる人は多くないと思います。
簿記とは、一言でいうと「会社の取引を帳簿に記録するための技術」です。技術というと硬い表現になりますが、帳簿を書くための方法とかテクニックと言い換えてもよいでしょう。
会社は日々あらゆる活動をしています。例えばコンビニでは日々商品を仕入れて、お客さんに販売しています。お店を借りているなら家賃を支払いますし、水道光熱費や従業員への給料などの支払っているでしょう。お店の始めるときに借金をしている場合は、借金返済も必要でしょう。
このような活動について、単にお金の出入りだけを把握するのであれば、銀行の取引履歴を見れば事足りるかもしれません。しかし、会社はお金の出入りだけでなく、商売でどれだけ儲かっているか、これから支払う必要があるお金はいくらか、いまどれだけの財産を持っているかなど、会社のあらゆる状態を把握しなければなりません。銀行の取引履歴だけ見ても、これらの状態はわからないのです。
そこで、会社は活動に伴って発生したあらゆる取引を帳簿に記録します。このときに使うのが簿記の技術というわけです。
ちなみに簿記は、英語で Book Keeping といいます。Bookは「帳簿」を意味しており、Keepはここでは「記録」とか「記入」するという意味だと思ってください。帳”簿記”録で「簿記」と覚えておくとよいでしょう。
簿記のゴールは財務諸表を作ること
帳簿に記録された会社の取引は、最終的に「財務諸表(ざいむしょひょう)」という書類にまとめられます。つまり、簿記のゴール(目的)は財務諸表を作ること、といえます。
財務諸表は一般的には「決算書」とも呼ばれるもので、会社の儲けを計算する「損益計算書(そんえきけいさんしょ)」と、会社が持っている財産などの状態を表す「貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)」が含まれます。
いきなり漢字ばかりの言葉が出て戸惑ってしまったかもしれませんが、いまは難しく考えず「そういうものがある」ぐらいに思っていただければOKです。
株式市場に上場している会社であれば、財務諸表を誰でも見られるように公表する義務があります。また、上場していなくても、納付する税金を計算したり、株式会社であれば配当金を計算するために財務諸表を作成する必要があります。会社であれば必ず作らなければいけない書類、ぐらいの認識でいまは大丈夫です。
つまり、会社は必ず財務諸表を作る必要があり、簿記はその財務諸表を作るために必須の技術なんです。そう考えると、簿記というものがこの社会でかなり重要なものであることがわかるのではないでしょうか。
簿記は何に役立つの?
通常、会社で帳簿の記録や財務諸表の作成をしているのは「経理」という職種の人です。
これを聞いて、「別に経理という仕事には興味ないから簿記なんて必要ないかな」と思った方もいるかもしれません。しかし、実際に経理の仕事をしなくても、実は簿記の知識はあらゆる面で役立ちます。
例えば、先ほど登場した財務諸表。簿記は財務諸表を作るための技術と言いましたが、簿記のルールを知っていれば、財務諸表を読み解くことができます。財務諸表には多くの情報が含まれており、財務諸表を読むことで「どれだけ儲かっているか」「この会社は財務的に安全か」など会社の健康状態を知ることができます。
そのため例えば、就職や転職する際に候補会社の財務諸表を読むことができれば、危ない会社を見分けて避けることができます。会社に投資をする際にも、継続的に配当金を出せる会社かどうか、将来的に株価が上がるかどうかなどのポイントを見極めることができるようになります。
財務諸表をちゃんと分析できるようになるには、簿記だけでなく会計知識も必要になってきますが、簿記の習得がすべてのスタートになります。
「会計」は簿記より大きい概念なんだ。
会計という大きな箱の中に、簿記も入っているイメージだね!
簿記を学んでから、会計の勉強にステップアップしていくのが理想だよ!
世界は簿記であふれている – 簿記は世界共通の言語 –
実は簿記は世界共通の言語なんです。
簿記という技術は、15世紀末に書物としてイタリアで登場して以来、その基本ルールは500年以上経った今でも一切変わっていません。それだけ完成度の高い技術だということです。そして、もう一つ重要なことは全世界でこの簿記のルールは共通ということです。
日本のソニーでも、アメリカのGoogleでも、中国のファーウェイでも、財務諸表のベースは同じ簿記のルールで作成されています※。
あなたが学生なら通っている学校でも簿記を使っていますし、会社員であればお勤めの会社でも簿記を使っています。今お使いのスマホのメーカーやパソコンは海外製かもしれませんが、その会社でも同じ簿記を使って財務諸表を作成しています。
普段意識することがないだけで、実は世界は簿記であふれているんです。
昔の教育の三種の神器として「読み書きそろばん」という言葉がありますが、現代の三種の神器は、英語・IT・会計(簿記)という人もいます。
英語は世界共通の言語と言われますが、それでも世界の割合(人口比)でいうと25%ほどです。ITも、プログラミング言語という意味ではJavaやC言語などいくつかの種類があります。
一方、簿記はただ1つのものが世界中で使われているので、正真正銘「世界共通の言語」です。
どうでしょう。なんだか簿記がすごいものに思えてきたのではないでしょうか。
※財務諸表の作成するにはルールには、もう一つ「会計ルール」(会計原則)というものがあり、こちらは国や会社によって異なる場合があります。簿記ルールが同じというのは、仕訳の方法や考え方など、ベースとなる部分が共通という意味です。学習を進めていくとここで言っている意味がだんだんわかってきます。
簿記はパズルゲーム!?
ここまで記事を読んでいただいた方の中には、なんだか簿記って難しそう、と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、簿記はとてもシンプルなルールの上に成り立っています。基本的なルールは次の3つです。
- 1つの取引を左右2つに分けて記入する
- 左側と右側の金額は常に一致する
- 取引の内容は5つのグループに分類され、それぞれポジションが決まっている
簿記はこのルールに従って、ブロックを積み上げていくパズルゲームのようなものです。
もう少し具体的にルールを説明します。簿記では、日々の取引を「仕訳(しわけ)」という方法を使って帳簿に記録していきます。
仕訳は「勘定科目(かんじょうかもく)」と金額を使って取引を記録する方法です。勘定科目は取引の内容を表す名称のことです。具体的には次のようなイメージです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 100 | 売上 | 100 |
仕訳の左側を「借方(かりかた)」、右側を「貸方(かしかた)」といいます。仕訳では取引を常に借方と貸方の2つに分けて記入します。どちらか一方が記入されないということはありません。
そして、左右の金額は常に一致します。上記の例では1対1ですが、複数行の記入があってもこれは崩れません。例えば次のようなイメージです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 300 | 現金 | 500 |
通信費 | 200 |
左側の合計は500円なので、右側の500円と一致しています。このように、常に借方と貸方の金額は一致します。
また、取引の内容を表す勘定科目は5つのグループに分類されます。具体的には、「資産(しさん)」「負債(ふさい)」「純資産(じゅんしさん)」「費用(ひよう)」「収益(しゅうえき)」の5つです。そして、資産と費用は借方(左側)、負債と純資産と収益は貸方(右側)があらかじめ決まっているホームポジションになります。仕訳でホームポジションの反対側に振り分けられるときがありますが、それはマイナスの金額を意味するというルールです。
仕訳を積み上げていくと帳簿になり、帳簿を組み替えると財務諸表になります。次のようなイメージです。
なんだかブロックを積み上げるパズルゲームみたいに見えてきませんか?
ブロックの高さは金額の高さを表していると思ってください。一つひとつの仕訳の左右の高さが同じなのはもちろんのこと、帳簿はこれらの積み上げなので、当然帳簿の左右も同じ高さになります。また、財務諸表(貸借対照表、損益計算書)も帳簿を組み替えて作っているので、同じく左右が高さは一致します。
簿記検定の問題も実務も、発生した取引をこのルールに従って間違えずに仕訳を作り、最終的に財務諸表を作っていくゲームなんです。左右のバランスが崩れたり、誤った金額や勘定科目を使うとゲームオーバー、みたいな感じですね。
簿記は基礎だけ身につければ、決して難しいものではありません。少しでも興味が湧いたら、まずは日商簿記3級の取得にチャレンジしてみましょう!
次の記事で日商簿記検定について解説していますので、ぜひご一読ください!
以上、ご参考になれば幸いです!