この記事では、FPが守るべき職業的原則(職業倫理)や、注意すべき法律(関連法規)について解説しています。
- FPには顧客利益の優先、守秘義務の遵守、顧客に対する説明義務(アカウンタビリティ)などの職業的原則が定められている
- FP業務を行う際には、税理士法、弁護士法、社会保険労務士法、保険業法、金融商品取引法などに抵触しないよう、FP単独でできること・できないことを把握しておく必要がある→○×問題で問われる

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用語
- ライフプランニング … ライフプラン(人生設計)を立てること。
1. FP業務の基本的な流れ
FPのメイン業務として、顧客のライフプランニングの支援があります。
ライフプランニングとは、顧客のライフプラン(人生設計)を立てることをいいます。ライフプランとは、例えば、いつ頃に結婚するかとか、いつ頃に住宅を購入するかなどといった、人生の重要なライフイベントの計画のことをいいます。
FPは、顧客から将来の夢や目標、家族構成や資産情報などをヒアリングし、顧客のライフプランニングを行います。
ここではライフプランニングの流れ(手順)についてみていきましょう。
顧客との信頼関係を構築します。
顧客の将来の夢や目標に加え、顧客から収入や貯金、家族構成など、様々な情報を収集します。
顧客から得た情報に基づいて、ライフイベント表、キャッシュ・フロー表、個人バランスシートなどのツールを活用しながら、顧客の資金面の現状を把握し、問題点などを分析します。
分析結果に基づき、問題解決のためのプラン(提案書)を作成し、顧客に説明します。
プランの実行を支援します。
顧客の経済状況などを踏まえ、プランを定期的に見直します。
2. FPと職業倫理
FPは、顧客に適切なライフプランニングを提案するために、家族構成や収入、資産状況など顧客の個人情報を得る必要があります。
そのため、FPには次のような職業的原則が定められています。
職業的原則 | 原則の内容 |
---|---|
顧客利益の優先 | FPは、顧客の立場に立って、顧客の利益を最優先にして提案を行わなければなりません。 |
守秘義務の遵守 | FPは、顧客から得た個人情報を顧客の同意なく、第三者に漏らしてはいけません。 FP業務を行うにあたって、ほかの専門家に意見を聞く場合など、必要な場合は顧客の同意を得たうえで、情報を伝えます。 |
顧客に対する説明義務 (アカウンタビリティ) | 顧客の理解を得られないままプランニングを進めても、プランの実行までたどり着けないかもしれません。 FPは、顧客に提案を行う際は、顧客が理解できるよう、十分に説明する必要があります。顧客が納得しているか、確認しながらプランニングを進めることが大切です。 |
3. FPと関連法規
税理士法や弁護士法などの法令では、有資格者だけが行うことができる独占業務を定めている場合があります。FPが顧客に対して個別具体的な助言や行動を行った場合、この独占業務に抵触してしまう可能性があるため、注意が必要です。
また、保険の募集や投資の助言など、一部の行為については法令上の登録を受ける必要があります。
このように、FPは業務に関連する法令について、できること・できないことを把握し、必要に応じて専門家の協力を得る必要があります。
法律 | 主な注意事項 |
---|---|
税理士法 | 個別具体的な税務相談、税務書類(確定申告書など)の作成はNG |
弁護士法 | 個別具体的な法律相談などの法律事務はNG |
社会保険労務士法 | 労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成、提出手続きの代行はNG |
保険業法 | 保険の募集、販売、勧誘はNG |
金融商品取引法 | 投資の助言や代理、運用等はNG |
3-1. 税理士法
税理士資格がないFPは、顧客の税務書類の作成や税務申告の代理、個別具体的な税務相談を行ってはいけません。これは有償・無償を問わずNGです。
一方、税務に関する一般的な説明はOKです。
- 顧客の税務書類(確定申告書など)を作成する
- 顧客の税務申告を代理で行う
- 個別具体的な税務相談を行う(有償・無償問わず)
- 顧客に一般的な税金に関する説明を行う
- 仮定の数値で税計算を行う
3-2. 弁護士法
弁護士資格がないFPは、顧客の個別具体的な法律相談などの法律事務を行ってはいけません。
一方、法律に関する一般的な説明はOKです。また、任意後見人(任意後見契約の受任者)になることや公正証書遺言作成時の証人になることなどは資格不要なので、FPでも可能です。
- 顧客の個別具体的な法律相談を行う
- 顧客の遺言書作成のアドバイスをする
- 相続問題の和解案を提案する
- 法定相続分について民法の条文を基に一般的な説明を行う
- 相続関連のセミナーを開催する
- 任意後見契約の受任者になる
- 公正証書遺言作成時の証人になる
3-3. 社会保険労務士法
社会保険労務士資格がないFPは、労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成、提出手続きの代行を行ってはいけません。
- 顧客の年金請求書を作成し、提出手続きを代行する
- 顧客から得た情報に基づき、公的年金の受給見込み額を試算する
3-4. 保険業法
保険募集人として登録していないFPは、保険の募集や販売、勧誘を行ってはいけません。保険募集人とは、生命保険や損害保険の販売や勧誘を行う人のことで、試験に合格して登録しなければ、その業務を行うことはできません。
- 保険契約の募集・勧誘を目的とした商品の説明を行う
- 保険の販売(保険契約の締結)を行う
- 保険の見直しの相談に応じる
- 保険の一般的なしくみ、商品性の説明を行う
- 顧客の条件に応じた必要保証額の計算を有償で行う
3-5. 金融商品取引法
金融商品取引業者として登録していないFPは、投資の助言や代理、運用等は行ってはいけません。
金融商品取引法は、報酬を得て金融商品の助言を行う契約を「投資顧問契約」とし、この契約に基づいて助
言を業として行うことを「投資助言・代理業」としています。したがって、投資助言・代理業の登録を受けていないFPは、顧客と投資顧問契約を締結して助言することはNGです。
また、投資一任契約を締結し、運用を業として行うことを「投資運用業」としています。したがって、投資運用業の登録を受けていないFPは、顧客と投資一任契約を締結して顧客資産の運用を行うことはNGとなります。
なお、金融商品取引業者としての登録は、内閣総理大臣の登録を受けることになります。
- 登録を受けずに、顧客と投資顧問契約して投資助言を行う
- 登録を受けずに、顧客と投資一任契約を締結して顧客資産の運用を行う
- 金融商品取引業者として登録を受けて、顧客資産の運用を行う
過去問にトライ!
【問題1】FPと職業倫理
次の文章を読んで、正しいものまたは適切なものには○を、誤っているものまたは不適切なものには×をつけなさい。
ファイナンシャル・プランナーは、職業倫理上、顧客情報に関する守秘義務を厳守しなければならない。
(日本FP協会 3級FP技能検定 学科試験 2024年5月 第1問(1))
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【解答】
【解説】
FPは顧客情報に関する守秘義務を厳守する必要があります。FPは、顧客から得た個人情報を顧客の同意なく、第三者に漏らしてはいけません。
【問題2】FPと関連法規(弁護士法)
次の文章を読んで、正しいものまたは適切なものには○を、誤っているものまたは不適切なものには×をつけなさい。
弁護士の登録を受けていないファイナンシャル・プランナーが、資産管理の相談に来た顧客の求めに応じ、有償で、当該顧客を委任者とする任意後見契約の受任者となることは、弁護士法に抵触する。
(日本FP協会 3級FP技能検定 学科試験 2024年1月 第1問(1))
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【解答】
【解説】
任意後見契約の受任者になることについて資格は不要なので、弁護士の登録を受けていないFPであっても受けることが可能です。
【問題3】FPと関連法規(金融商品取引法)
次の文章を読んで、正しいものまたは適切なものには○を、誤っているものまたは不適切なものには×をつけなさい。
ファイナンシャル・プランナーが顧客と投資顧問契約を締結し、当該契約に基づき金融商品取引法で定める投資助言・代理業を行うためには、内閣総理大臣の登録を受けなければならない。
(日本FP協会 3級FP技能検定 学科試験 2023年9月 第1問(1))
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【解答】
【解説】
FPが顧客と投資顧問契約を締結し、当該契約に基づき金融商品取引法で定める投資助言・代理業を行うためには、内閣総理大臣の登録を受けなければなりません。
【問題4】FPと関連法規(弁護士法)
次の文章を読んで、正しいものまたは適切なものには○を、誤っているものまたは不適切なものには×をつけなさい。
弁護士の資格を有しないファイナンシャル・プランナーが、顧客に対して、法定後見制度と任意後見制度の違いについて一般的な説明を行う行為は、弁護士法に抵触する。
(日本FP協会 3級FP技能検定 学科試験 2023年5月 第1問(1))
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【解答】
【解説】
弁護士の資格を有しないFPであっても、法律や制度に関する一般的な説明を行う行為は弁護士法に抵触しません(個別具体的な法律相談やアドバイスは抵触する可能性がある)。
【問題5】FPと関連法規(保険業法)
次の文章を読んで、正しいものまたは適切なものには○を、誤っているものまたは不適切なものには×をつけなさい。
生命保険募集人の登録を受けていないファイナンシャル・プランナーが、ライフプランの相談に来た顧客に対し、生命保険商品の一般的な商品性について説明することは、保険業法において禁止されている。
(日本FP協会 3級FP技能検定 学科試験 2023年1月 第1問(1))
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【解答】
【解説】
生命保険募集人の登録を受けていないFPであっても、生命保険商品の一般的な商品性について説明することは、保険業法で禁止されていません。
【問題6】FPと関連法規(税理士法)
次の文章を読んで、正しいものまたは適切なものには○を、誤っているものまたは不適切なものには×をつけなさい。
税理士資格を有しないファイナンシャル・プランナーが、顧客に対して、所得税の医療費控除について法律の条文を基に一般的な説明を行う行為は、税理士法に抵触する。
(日本FP協会 3級FP技能検定 学科試験 2022年9月 第1問(1))
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【解答】
【解説】
税理士資格を有しないFPであっても、税法の条文を基に一般的な説明を行う行為は税理士法に抵触しません(顧客の個別具体的な相談やアドバイスを行う行為は抵触する可能性があります)。
【問題7】FPと関連法規(税理士法)
ファイナンシャル・プランニング業務を行うに当たっては、関連業法等を順守することが重要である。ファイナンシャル・プランナー(以下「FP」という)の行為に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない資格の登録等については考慮しないこととする。
1) 投資助言・代理業の登録を受けていないFPが、顧客と投資顧問契約を締結し、当該契約に基づいて特定の上場株式の投資判断について有償で助言をした。
2) 税理士の登録を受けていないFPが、有料のセミナーにおいて、仮定の事例に基づき、一般的な税法の解説を行った。
3) 生命保険募集人・保険仲立人の登録を受けていないFPが、変額年金保険の一般的な商品内容について説明を行った。
(日本FP協会 3級FP技能検定 実技試験 [資産設計提案業務] 2024年5月 問1)
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【解答】
1
【解説】
1 は、金融商品取引法に関する記述です。
金融商品取引法では、報酬を得て金融商品の助言を行う契約を「投資顧問契約」とし、この契約に基づいて助言を業として行うことを「投資助言・代理業」としています。投資助言・代理業の登録を受けていないFPは、顧客と投資顧問契約を締結して助言してはいけません。
したがって、1 は最も不適切であるため、これが正解となります。
2 は、税理士法に関する記述です。税理士の登録を受けてないFPであっても、仮定の事例に基づき、一般的な税法の解説を行うことは問題ありません。ちなみに、個別・具体的な事例に対する助言であった場合は不適切となります。
3 は、保険業法に関する記述です。生命保険募集人・保険仲立人の登録を受けていないFPであっても、保険商品の一般的な商品内容について説明を行うことは問題ありません。なお、具体的な事例に対する助言であった場合はNGです。ちなみに、保険契約の募集・勧誘を目的とした商品の説明であった場合は不適切になります。
以上で第2回のFP3級講座はおわりです。お疲れさまでした!