第8回 商品販売-売上②(売上諸掛り・返品・前受金・受取商品券)【日商簿記3級講座】

第8回 商品販売-売上②(売上諸掛り・返品・前受金・受取商品券)【日商簿記3級講座】

この記事では、商品を売り上げた(販売した)ときの応用的な仕訳について解説しています。送料等の諸経費を支払った場合や返品があった場合、注文時に手付金を受け取った場合、さらに代金として商品券を受け取った場合の仕訳について学んでいきましょう。

この記事で学ぶこと
  • 売上諸掛りは、「発送費」(費用)で仕訳する
  • 商品が返品されたときは、元の仕訳の反対の仕訳を行う
  • 手付金を受け取ったときは、貸方に「前受金」(負債)を記入する
  • 代金として商品券を受け取ったときは、借方に「受取商品券」(資産)を記入する
ダニー

仕入のときと同じで、諸掛りの仕訳はしっかり押さえておこう!

目次

1. 用語と勘定科目

用語
  • 売上戻し(うりあげもどし) … 売り上げた商品が返品されること。
  • 売上諸掛り(うりあげしょがかり) … 商品を売り上げたときにかかった諸経費のこと。配送運賃のほか、保険料、梱包代などが含まれる。
  • 手付金(てつけきん) … 商品の引き渡し前に支払われる代金のこと。一般的には、購入意思や代金支払能力を確認するために支払われる。
  • 商品券 … 券面に記載された一定金額の商品を提供してもらう権利のある有価証券。他社が発行した商品券を受け取った場合、その他社(発行者)に持ち込むことで現金に換えることができる。全国百貨店共通商品券(共通商品券)や自治体や商店街などが発行する商品券、ギフトカードなどが含まれる。
勘定科目
  • 発送費(はっそうひ) … 商品を販売した際に支払った送料等の諸経費を処理する勘定科目。費用。
  • 前受金(まえうけきん) … 手付金を受け取った場合の商品を引き渡す義務を表す勘定科目。負債。
  • 受取商品券 … 商品券と引き換えに現金を受け取る権利を表す勘定科目。資産。

2.【売上諸掛り】送料を支払ったときの仕訳

取引

ダニー株式会社は、得意先のミシェル商事に商品400円(送料込み)を販売し、代金は掛けとした。なお、商品を運送業者に引き渡すと同時に送料10円(費用処理する)を現金で支払った

【売上諸掛り】送料を支払ったときの仕訳

商品を発送した際にかかった送料などの諸経費は売上諸掛りといいます。売上諸掛りを支払った場合は、「発送費(はっそうひ)」という費用勘定で処理します

売上諸掛り(当社負担)の仕訳
借方貸方
売掛金 400売上 400
発送費 10現金 10

諸掛りは仕入時と売上時ともに費用で処理しますが、勘定科目が異なるので注意しましょう。

仕入諸掛り仕入 」勘定(費用)に含めて処理する
売上諸掛り発送費 」勘定(費用)で処理する

3.【返品】商品が返品されたときの仕訳

取引

ダニー株式会社は、得意先のミシェル商事に掛けで売り上げた商品300円のうち、100円分が品違いのため返品された。なお、返品額は掛け代金から控除することとした。

【返品】商品が返品されたときの仕訳

販売した商品が返品された(売上戻しがあった)ときは、結果として商品売買取引がなかったことになるため、返品分の売上の取り消しを行います

売上時の仕訳は←借方売掛金勘定300円、貸方→売上300円が記入されたと考えられますので、返品時はこれの逆の仕訳を行います。

仕入300円のうち100円分が返品され、返品額は掛け代金から控除するとあるので、元の仕訳の借方と貸方を逆にして、←借方売上100円、貸方→売掛金100円を記入します。これで返品仕訳の完成です。

商品が返品されたときの仕訳(売上戻しの仕訳)
借方貸方
売上 100売掛金 100

4.【前受金】売上時の手付金(内金)の仕訳

4-1. 商品の注文時に手付金(内金)を受け取ったときの仕訳

取引

ダニー株式会社は、得意先のミシェル商事から商品の注文を受け、手付金として100円を現金で受け取った

【前受金】商品の注文時に手付金(内金)を受け取ったときの仕訳

商品の注文時に手付金(内金)を受け取った場合、「商品を引き渡す義務」が発生するため、この義務を「前受金(まえうけきん)」という勘定科目を使って、負債の増加(貸方→)として記録します。

また、現金を受け取っているので、現金勘定を←借方に記入します。なお、まだ商品を引き渡していないので、売上勘定はこの時点では記入しません。

商品の注文時に手付金(内金)を受け取ったときの仕訳
借方貸方
現金 100前受金 100

4-2. 商品を引き渡したときの仕訳

取引

ダニー株式会社は、得意先のミシェル商事に商品500円を販売した。商品代金のうち、100円は手付金として受け取っていたため、これを差し引き、残額の400円は掛けとした。

注文時に手付金を受け取った取引について、商品を引き渡したときは、まず売上勘定を貸方→に記入します。

そして、商品を引き渡す義務を果たしたので、負債の減少として前受金←借方に記入します。また、商品代金と手付金の差額である400円は掛けとしているので、資産の増加として売掛金←借方に記入します。

手付金取引をした商品を引き渡したときの仕訳
借方貸方
売掛金 400売上 500
前受金 100

5.【受取商品券】商品券による売上の仕訳

5-1. 代金として商品券を受け取ったときの仕訳

取引

ダニー株式会社は、得意先のミシェル商事に商品600円を販売し、代金として自治体発行の商品券500円を受け取り、残額は掛けとした。

商品券のしくみ
商品券のしくみ
【受取商品券】代金として商品券を受け取ったときの仕訳

商品の代金として商品券を受け取るときがあります。商品券には、例えば全国の加盟百貨店で使える全国百貨店共通商品券(共通商品券)や自治体や商店街などが発行する商品券、ギフトカードなどが含まれます。

この商品券は、商品券の発行者に持ち込むことで現金化することができます。そのため、商品券を受け取ったときは、「商品券と引き換えに現金を受け取る権利」を得るので、この権利を「受取商品券」という勘定科目を使って、資産の増加(←借方)として記録します。

今回のケースでは代金の一部は掛けとしているので、売掛金←借方に記入します。また、商品を売り上げたので、売上勘定を貸方→に記入します。

代金として商品券を受け取ったときの仕訳
借方貸方
受取商品券 500売上 600
売掛金 100

5-2. 商品券を精算(現金化)したときの仕訳

取引

ダニー株式会社は、顧客から受け取った商品券500円を清算し、現金を受け取った

商品券と引き換えに現金を受け取ることを商品券の精算といいます。商品券を精算したときは、まず現金が増加するので、現金勘定を←借方に記入します。

そして、商品券の精算により、現金を受け取る権利がなくなるので、資産の減少として受取商品券貸方→に記入します。

商品券を精算(現金化)したときの仕訳
借方貸方
現金 500受取商品券 500

5-3. 商品券による売り上げでおつりを支払ったときの仕訳

取引

ダニー株式会社は、得意先のミシェル商事に商品600円を販売し、代金として自治体発行の商品券1,000円を受け取り、おつりは現金で支払った

商品券売上の別パターンで、おつりを支払った場合の仕訳も紹介しておきます。

今回のケースでは現金でおつりを支払っているので、受け取った商品券の金額と売上代金の差額400円を現金勘定で貸方→に記入することになります。

商品券による売り上げでおつりが出たときの仕訳
借方貸方
受取商品券 1,000売上 600
現金 400

6. 確認テスト

6-1.【問題1】売上諸掛り・前受金の仕訳

下記の取引について仕訳してください。ただし、勘定科目は選択肢から最も適当と思われるものを選び、記号で解答すること。

東京株式会社は、得意先の神奈川商事に商品¥7,000(送料込み)を販売した。商品代金のうち、¥2,000はあらかじめ受け取っていた手付金と相殺し、残額は掛けとした。なお、商品を運送業者に引き渡すと同時に送料¥400(費用処理する)を現金で支払った。

【選択肢】
ア. 売掛金  イ. 現金  ウ. 発送費  エ. 売上  オ. 前受金  カ. 支払手数料

解答欄のイメージ
借方貸方
記号金額記号金額
(   )(   )
(   )(   )
(   )(   )
解答・解説を見る

【解答】

借方貸方
記号金額記号金額
前受金 2,000売上 7,000
売掛金 5,000現金 400
発送費 400

【解説】

売上諸掛りと手付金(前受金)に関する仕訳問題。

  • 商品を売り上げたときは、収益の発生として「売上(収益)」を貸方→に記入します。
  • 売上代金のうち、2,000円はすでに手付金として受け取り済みなので、商品を引き渡す義務であった「前受金(負債)」を←借方に記入します。
  • 売上代金の残額5,000円(売上代金7,000円-手付金分2,000円)は掛けとしたので、代金をあとで受け取る権利を表す「売掛金(資産)」を←借方に記入します。
  • 売上諸掛り400円を現金で支払ったので「現金(資産)」を資産の減少として貸方→に記入するとともに、費用の発生として「発送費(費用)」を←借方に記入します。

6-2.【問題2】受取商品券の仕訳

下記の取引について仕訳してください。ただし、勘定科目は選択肢から最も適当と思われるものを選び、記号で解答すること。

東京株式会社は、得意先の神奈川商事に商品¥3,000を販売し、代金として自治体発行の商品券¥2,000を受け取り、残額とした。

【選択肢】
ア. 受取商品券  イ. 前受金  ウ. 売上  エ. 売掛金  オ. 現金  カ. 発送費

解答欄のイメージ
借方貸方
記号金額記号金額
(   )(   )
(   )(   )
解答・解説を見る

【解答】

借方貸方
記号金額記号金額
受取商品券 2,000売上 3,000
売掛金 1,000

【解説】

商品券売上に関する仕訳問題。

  • 商品を売り上げたときは、収益の発生として「売上」(収益)を貸方→に記入します。
  • 売上代金として、2,000円の商品券を受け取ったので、商品券と引き換えに現金を受け取る権利を表す「受取商品券」(資産)を←借方に記入します。
  • 売上代金の残額1,000円(売上代金3,000円-商品券分2,000円)は掛けとしたので、代金をあとで受け取る権利を表す「売掛金」(資産)を←借方に記入します。

以上で第8回の日商簿記3級講座はおわりです。お疲れさまでした!

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